小児歯科学雑誌
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小児歯科領域におけるレーザーによる齲蝕予防に関する研究
山田 恵子
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1985 年 23 巻 3 号 p. 575-591

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抄録

レーザー光がエナメル質に耐酸性を付与することは, これまでの多くの基礎的研究により明らかである。実際にレーザーを齲蝕予防手段として臨床に導入するには歯髄の損傷や患者の痛感覚がなく,かつ十分な耐酸性の得られるエネルギーを設定する必要がある。
本研究は上記を満たす条件を設定する目的で,抜去乳歯及び幼若小臼歯に各種エネルギー密度でNd:YAG レーザーを照射し, 耐酸性付与の程度, 照射時の髄腔側温度上昇及び耐酸性が付与されるエナメル質の深さについての実験を行い,次の結果を得た。
1)各種エネルギー密度のNd:YAGレーザー照射後のエナメル表面を0.1M 乳酸(pH4.5) にて脱灰し, S E M にて観察したところ, 乳歯では37.5J/cm2 , 幼若小臼歯では62.5J/cm2 で確実な耐酸性が得られた。
2) レーザー照射時の髄腔側温度上昇は歯面への墨塗布の有無にかかわらず, エネルギー密度が高い程大きな値を示すが,墨塗布なしの変化量は墨塗布の数倍であった。耐酸性の得られるエネルギー密度照射の際は, 乳歯で5 ℃ , 幼若小臼歯で4 . 3 ℃ の温度上昇を示し,歯髄損傷,痛感覚の閾値には達しないと思われた。
3) 幼若小臼歯に30J/cm2, 45J/cm2 , 65J/cm2 のレーザー照射をおこない, 対照に対するエナメル質耐酸性獲得の程度を比較した結果, 30J/cm2 は殆ど耐酸性獲得はなされず, 45J/cm2 では10% 前後, 65J/cm2 では50% 前後のエナメル質溶解の抑制がみとめられた。また,65J/cm2照射エナメル質は表面から80μm以上の深さまで耐酸性が獲得された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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