小児歯科学雑誌
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暫間的間接歯髄覆罩法の歯髄に及ぼす影響に関する臨床病理学的研究
後藤 讓治
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1985 年 23 巻 4 号 p. 926-938

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抄録
齲蝕が歯髄に接近した深部齲蝕の処置に当って,罹患象牙質の一部を残留させたまま行う暫間的間接歯髄覆罩法は,2回法であり煩雑さを有しているが,歯髄組織を露出させ損傷を及ぼすことなく保存が可能である保存的生物学的療法とされている。本邦においては,暫間的間接歯髄覆罩法に関する報告は極めて少なく,特に臨床病理学的解明は全くなされていない。そこで,ヒト永久歯10例を用いて暫間的間接歯髄覆罩法の臨床病理学的検索を行った。
使用した薬剤は,水酸化カルシウム製剤及び酸化亜鉛ユージノール製剤である。1回目の処置後臨床観察がなされ,約12週後に2回目の処置が行われ,この時点で一部の症例は抜去された。その後さらに30日から72日に渡る臨床観察の後抜歯され,通法に従い脱灰後ツエロイジンに包埋され,連続切片標本として鏡検された。1回処置後の臨床的不快症状の発現はごく少数例にすぎず,短期間で消失した。2回処置後には,臨床的不快症状の発現はみられなかった。歯髄及び象牙質に認められた変化は比較的少なく,無変化例も存在した。1回処置群では,一部炎症性の変化の残留もみられたが,2回処置群には認められなかった。また,修復性象牙質の新生も一部の症例に認められた。
暫間的間接歯髄覆罩法は,臨床成績,病理成績共に比較的良好であり,生活歯髄を露出損傷することなく保存可能な療法として,臨床上応用価値を有する術式と判定された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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