小児歯科学雑誌
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上顎第二乳臼歯歯冠外形と歯髄腔との関係
立体構築による三次元的解析
野坂 久美子伊藤 雅子小野 玲子甘利 英一
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1986 年 24 巻 1 号 p. 22-37

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抄録

上顎第二乳臼歯63歯を用い,髄室から歯冠表面までの距離をpersonal computerを用いて三次元的な解析の基に測定し,歯冠外形と髄室との関係を明らかにした。
資料は歯根の吸収段階でI型(1/2以下),II型(1/2以上),III型(歯冠のみ)に分類した。研究方法は,歯を樹脂包埋し,その表面に2本のマーカーを刻印し,硬組織薄切用ミクロトームを用いて近遠心方向で93μの連続切片を作成し,それを10倍に拡大トレース後,computerにて再構築した。観察部位は,咬合面ならびに歯冠を近遠心,頬舌的に各々中央で切断し,その断面から外側をみた近遠心,頬舌側面観の5図形,さらに中央窩,近・遠心小窩,髄室角における近遠心,頬舌側断の14断面図形である。
結果:髄室から咬合面までの距離で最小値を示したのは,近心頬側髄室角の2.5~2.6mmであった。髄室から歯冠外周までの距離では,髄室角の切断面観察で,近心頬側髄室角から近心ならびに頬側までの距離が最も小さく2.7mmであった。髄室最大豊隆部から歯冠外周までは,頬舌側面観ならびに中央窩切断面の近心が最も小さく1.9~2.0mmであった。歯頸部で最小距離を示したのは頬側面観の近心で,1.4~1.7mmであった。また,咬頭頂に対する各髄室角は,近遠心的に1mm弱,頬舌的に約1mm,それぞれ内方に位置していた。一方,歯根の吸収段階によって,歯質の厚さが有意に変化する部位は少なかった。従って,窩洞形成時には生理的な二次象牙質の形成を過信することなく,それぞれの部位の歯質の厚さを熟知する必要があると思われた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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