小児歯科学雑誌
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生活歯髄切断法にGlutaraldehydeを使用した効果に関する実験的研究
猪狩 和子
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1988 年 26 巻 1 号 p. 131-145

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抄録

生活歯髄切断法において, 殺菌と歯髄表層の固定を目的として歯髄切断面を酸性GAで処理した場合の効果を,水酸化カルシウム糊剤被覆群と酸化亜鉛糊剤被覆群について検討し次の結果を得た.
1)モデル実験では,酸性GA貼布によりpH値が低下した面に,水酸化カルシウムを貼布すると,直ちに強アルカリに変化し,水酸化カルシウムのpH値は酸性GAの影響をうけなかった.
2)イヌ幼若永久歯による実験では,使用したGAの濃度に関わらず,術後4週で,水酸化カルシウム糊剤被覆群は象牙質様の庇蓋硬組織の形成をみたが,酸化亜鉛糊剤被覆群はその形成をみなかった.
3)術後4週で,5%GA併用群は2%より歯髄組織における炎症性変化が強かった.水酸化カルシウム糊剤被覆群は酸化亜鉛糊剤被覆群に比べ,濃度差の影響が少なかった.
4)水酸化カルシウム単味群と,5%GAと水酸化カルシウム併用群は時間の経過と共に歯髄組織における炎症性変化の軽減を示したが,5%GAと酸化亜鉛併用群は,8週後で歯髄全体に線維化を示した.
5)5%GAと水酸化カルシウム併用群は,水酸化カルシウム単味群に比較して象牙質様庇蓋硬組織の形成の開始は遅いが,8週後にみられた庇蓋硬組織の厚径は大きかった.
6)GAと水酸化カルシウム併用法は,生活歯髄切断法に有効である.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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