小児歯科学雑誌
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乳歯根尖病巣の細菌学的検索
豊嶋 ゆかり福島 久典井上 純一佐々木 好明山本 宏治片尾 秀信尾崎 公子森谷 泰之斉藤 武公稗田 豊治佐川 寛典
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1988 年 26 巻 3 号 p. 449-458

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抄録
根尖部にX線透過像を有する乳臼歯9本を対象に,根管内容物の細菌学的検索を行い,以下の成績を得た.
1)根管内容物を培養した結果,病巣が拡大し,永久歯胚の偏位が認められた4症例では全てから細菌が検出された.一方,病巣が歯胚に及んでいなかった5症例では3症例のみから細菌が分離された.
2)培養陽性であった7症例は,通性嫌気性菌のみが分離された症例もみられたが,全体的に偏性嫌気性菌の分離頻度が高かった.
3)分離細菌としては, 偏性嫌気性菌ではBacteroides,Fusobacterium,Peptostrepto-coccus,Streptococcus,Eubacteriumが,通性嫌気性菌ではStreptococcusが優勢であった.薗種レベルでみると,非発酵性菌が多く分離されたが,全症例で共通した分離菌種は認められなかった.
4)永久歯胚の偏位が認められた症例とそれ以外の症例で分離細菌を比較した結果,前者でBactereides,Peptostreptococcus,Eubacteriumなどの偏性嫌気性菌の分離頻度が高かった.これらは,成人の拡大した病巣を有する症例からの分離細菌と一致していた.以上の成績から, 乳歯の根尖病巣の進展には, 永久歯の場合と同様に,Bacteroides,PeptestreptococcusおよびEubactriumなどの偏性嫌気性菌が関与している可能性が示唆される.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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