小児歯科学雑誌
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先天性表皮水疱症の姉弟例
小口 春久青森 継充及川 清
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1988 年 26 巻 4 号 p. 805-813

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抄録

表皮水庖症は,主に先天性素因により,軽度の物理的な刺激で容易に皮膚や粘膜に水疱やびらんを生ずる稀な遺伝性疾患である.種々の病型があり,そのうち栄養障害型は,特に皮膚および粘膜に瘢痕のために萎縮が生じて開口障害を伴い,口腔衛生管理は不十分となり,多数歯にわたって重度の齲蝕発症がみられる.しかしその治療は開口障害を有しているために極めて困難性が大である.
今回の報告例は,臨床的には栄養障害型先天性表皮水庖症と診断された姉弟例であるが,それぞれの症例について,全身的および口腔内所見を明らかにするとともに,治療を実施した結果についても報告する.
1)姉弟ともに心身の発育障害は著明であり,末梢血液の検査では明らかな貧血を伴っていた.
2)口腔内所見としては,口腔粘膜にびらんおよび水庖が認められ,口腔前庭は浅く,口蓋皺壁は,姉弟ともに消失していた.
3)口唇周辺の皮膚および粘膜には瘢痕萎縮がみられ,明らかな開口障害や舌小帯短縮が認められた.
4)姉弟ともに口腔衛生管理状態は極めて不良であり,多数歯にわたって齲蝕がみられ,それらは,乳歯および永久歯の何れにも認められた.
5)永久歯には姉弟とも,臼歯部に軽度のエナメル質形成不全が認められた.
6)X線写真上では,永久歯の先天性欠如は認められず,歯の萌出および歯胚の発育に異常はみられなかった.7)齲蝕の治療としては姉8歯,弟は22歯にわたって実施した.その結果として,食物摂取量は増加して,全身栄養状態は改善されて,顔色はよくなった.また,口腔衛生管理状態が改善された結果,口臭は消失した.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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