小児歯科学雑誌
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根管充填剤に含まれる水酸化カルシウムの血清中に於ける変化
田中 光郎加藤 一宏小野 博志門磨 義則今井 庸二
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1989 年 27 巻 1 号 p. 41-45

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抄録

我々は水酸化カルシウム系根管充填剤のラット皮下埋没実験において,根管充填剤中の水酸化カルシウムが皮下で4週の間に完全に炭酸カルシウムに変化することを明らかにしたが, この変化が in vitro でも生じ得る化学的な反応であるのか否か, また, その経時的な変化の動態を調べるために,カルビタール,ビタペックス,水酸化カルシウム単味の3種の薬剤の血清中,さらに後二者について,その空気中での変化を調査した。また,水酸化カルシウムの血清,蒸留水への溶解性についても併せて検討した。
その結果,水酸化カルシウムはそれが含まれる薬剤の材質にもよるが,血清中においては数週間のうちに中和され炭酸カルシウムに変化することが明らかになった。一方,空気中における変化は血清中にくらべるとはるかに遅く保存中,あるいは浸出液との接触のない場合などにはほとんど変化しないものと思われた。また,水酸化カルシウムは血清,蒸留水にも溶解するが,炭酸カルシウムはほとんど溶解しない事が明らかになり,血清との接触によって炭酸カルシウムに中和された水酸化カルシウムの化学的無刺激性を示唆していると思われた。これらの事は水酸化カルシウムの薬理作用を考える上で重要な事実であると思われる。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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