小児歯科学雑誌
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セルスポットを応用した下顎多点運動解析システムの開発と乳歯列期小児の側方滑走運動に関する研究
山崎 要一
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1989 年 27 巻 2 号 p. 395-414

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抄録

セルスポットを応用し,複数の下顎任意点について,3次元的に同時運動解析が可能な,下顎多点運動解析システムを開発した。このシステムは,測定時の被験者の負担が少なく,低年齢の小児にも十分使用できるものである。システムの精度については,出力座標値の3次元的歪を補正する方法を考案し,そのプログラムを作製した。これにより,測定視野内の80個の格子点における,設定値と補正値の3次元的距離は,平均60μmまで低減することができた。
本システムを使用して,乳歯列期小児9名(男児3名,女児6名)の中心咬合位を始点とする側方滑走運動を測定し,下顎歯列上の5ケ所の解析点(下顎切歯点,左右下顎乳犬歯尖頭,左右下顎第2乳臼歯遠心頬側咬頭頂)について,その運動距離,角度を算出した。
各々の運動を比較するために,切歯点部における移動距離が2mmと4mmになるよう,側方滑走運動を規格化した。その結果,最小運動部位は作業側第2乳臼歯部で,最大運動部位は平衡側乳犬歯部であり,前頭面投影角と矢状面投影角は,各解析点とも2mm移動点より4mm移動点の方が有意(危険率5%)に小さくなっており,滑走距離が増加するほど,下顎歯列はより水平的に動いていた。水平面投影角は,各解析点とも2つの規格化された運動の間に有意差は認められず,運動方向はほぼ一定していた。また,被験者ごとの左右の側方滑走運動は,統計学的に非常に対称的に行なわれていることが明らかとなった。
本研究で対象とした乳歯列期小児の側方滑走運動は,成人の報告と比較し,側方への動きが小さくやや前方よりに運動しており,また下方への動きが少なく水平的に運動しているものと考えられた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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