小児歯科学雑誌
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乳歯直接覆髄処置における臨床的およびX線学的経過観察
中島 正人信家 弘士三宅 雄次郎砂田 雅彦長坂 信夫
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1989 年 27 巻 3 号 p. 654-662

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抄録

乳歯の齲蝕処置を行っている際に,露髄をきたし,歯髄処置を施さなければならない場合がある。露髄をした歯髄に対する処置の一つとして直接覆髄法があるが,乳歯の場合,歯髄への感染を起こしやすいため,永久歯に比べ直接覆髄処置の適応症が狭いと言われている。このため,小児歯科臨床においては,乳歯に対して直接覆髄処置を行うことが少なく,その後の経過を観察した報告は非常に少ない。
今回,乳歯直接覆髄処置後の経過を評価する目的で,本学歯学部小児歯科外来を来院した3,675名の患児の診療録を調査し,以下の結果を得た。
1)直接覆髄処置,生活歯髄切断処置,および抜髄処置をおこなった乳歯の総数は2,511歯で,このうち直接覆髄処置は124歯(4.9%)であった。
2)直接覆髄処置後の経過を観察することができた乳歯100歯の臨床的成績は最終観察時において,良好例94歯(94%),不良例6歯(6%)であった。不良例はすべて18カ月未満に出現しており,特に6カ月未満において多く認めた。
3)歯種別では,前歯部に臨床的不良例が多く認められたが,施術時年齢間では差は認められなかった。また,術後の修復物別では前歯部におこなったグラスアイオノマーセメントやコンポジットレジンに臨床的不良例が多く認められた。
4)臨床的不良例における異常所見は,自発痛が2歯,歯牙の変色が1歯,歯肉の腫脹が1歯,膿瘍形成が2歯認められた。
5)X線的に経過を判定できたのは66歯で,最終観察時の成績は,良好例58歯(87.9%),不良例8歯(12.1%)で,ほとんどの不良例が施術後24カ月未満に出現していた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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