小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
巨大な唾石の形態学的,組織学的観察
勝山 博文松本 ゆかり大森 郁朗
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 28 巻 1 号 p. 172-179

詳細
抄録
重症心身障害者に生じた唾石が無症状のまま経過し,顎下腺開口部付近で大きく成長していたものが,徒手的に摘出された症例に遭遇した.この唾石について,実体顕微鏡, 走査電子顕微鏡( 以下, SEMと略す) による表面観察を行った.また, 長軸方向に唾石を切断した後,切断面の実体顕微鏡観察,X線写真観察,SEM観察を行った.さらに,X線マイクロアナライザー(以下,XMAと略す)により,切断面の元素分析を行い,以下の結果を得た.
1)唾石の形状は棍棒状をなし,大きさは最大長径22mm,最大幅径7mmであった.乾燥重量は0.627gであった.
2)SEMでの表面観察により,隆起物表面に,多数の小孔を伴う多孔性の構造が観察された.
3)切断面の実体顕微鏡観察では,遠心端から約1/3の位置に核が認められ,その周囲には比較的均質な層状構造部が観察された.最外層では多数の類円形の構造物が観察された.
4)X線写真による観察では切断面での観察所見に一致して,核部,層状構造部,最外層部が観察された.
5)切断面のSEM観察により,層状構造部では,比較的規則的な層状構造が観察されたのに対して,最外層部での層状構造は,規則的ではなくウロコ状であった.
6)XMAによる元素分析の結果,CaとPが多く検出され,線分析の結果から,主な無機成分がリン酸カルシウムであることが示唆された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top