小児歯科学雑誌
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開咬を有する小児の歯列弓形態・咬合状態の乳歯列期内における変化に関する研究
斉藤 徹五十嵐 博恵猪狩 和子千葉 秀樹真柳 秀昭神山 紀久男
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1990 年 28 巻 4 号 p. 996-1013

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抄録

乳歯列前期に開咬を有する小児の歯列弓形態・前歯部咬合状態の特徴およびその経年変化を知る目的で乳歯列開咬小児40名の連続歯列石膏模型を用いて三次元計測を行った.その結果,次のような結論を得た.
1.乳歯列前期に開咬を有する小児では上顎特に前方部が形態的影響を受け,下顎ではほとんど影響を受けない.開咬小児は乳犬歯間幅径が小さく,長径が大きい.また,口蓋前方部は高く後方部は低い.乳中切歯は前上方に位置している.
2.乳歯列後期において,開咬治癒群は正常群と歯列弓の形態に差はなくなる.しかし,上顎乳中切歯は著しく口蓋側に傾斜し,垂直被蓋はむしろ正常群より大きくなる.このとき乳歯列前期に水平被蓋が大きいものほど後期には垂直被蓋は大きくなる.
3.乳歯列前期から後期までの変化に関して,治癒群では増加,不変,減少の分布が正常群に近づく方向に偏っている.特に前期において正常群との形態差が大きかった部位での偏りが大きい.
4.数量化理論II類による予測の結果,乳歯列期内での自然治癒には吸指癖の中止だけではなく前期における歯列弓形態・咬合状態もかなり関与していることがわかった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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