小児歯科学雑誌
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乳歯根尖性歯周炎により炎症性濾胞性歯嚢胞が発生した2症例
久芳 陽一副島 嘉男溝部 都孝本川 渉
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1991 年 29 巻 3 号 p. 619-625

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抄録

今回我々は,乳歯慢性根尖性歯周炎により下顎左側第2小臼歯の位置異常および炎症性濾胞性歯嚢胞を生じた7歳3カ月と8歳4カ月の女児の症例を経験した.
症例1では根管充填時のX線写真所見では根管充填剤は根突部までは達せず,根尖の1/2の内側から根分岐部にかけて溢出しているのが認められた.根管充填9カ月,自覚症状はなかったが,下顎左側第2乳臼歯歯根相当部から歯肉頬移行部にかけて境界不明瞭な骨の膨隆が認められた.X線写真所見では溢出したビタペックスは消失し,下顎左側第2小臼歯の歯冠を含む境界明瞭な嚢胞と思われる透過像がみられた.
症例2では根管充填時のX線写真所見では根充剤は根突孔外に溢出し,後継永久歯歯胚に達していた.7カ月後,症例1とほぼ同様の所見がみられた.
処置としては,2症例とも先行乳歯の抜歯と開窓療法後,保隙装置を装着し位置異常を生じていた後継永久歯の萌出を誘導した.このように乳歯の歯髄処置の際には,後継永久歯歯胚がその根尖付近に非常に近接していることを念頭におき,特に乳歯の感染根管処置をおこなった場合には,将来濾胞性歯嚢胞の発生も予想されるため,予後診査の重要性,特に定期的な術後のX線写真による観察の必要性が示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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