1992 年 30 巻 5 号 p. 904-915
乳臼歯一歯のみの早期喪失が小児の咀嚼機能に対して,どのような影響を及ぼしているかについて検討を行った。
被検児は, Hellmanの歯年齢IIA, IICで下顎第一乳臼歯一歯のみ早期喪失している小児10名(欠損群)と,欠損がなく歯列,咬合などに問題のない小児10名(対照群)を用いた。方法としては, MKG-K6を用いてガムとピーナッツのそれぞれの咀嚼運動パターンを経時的に観察し分析,検討を行った。
1)定型的咀嚼パターンは,対照群及び欠損群の非欠損側で多くみられた。
2)定型的咀嚼パターンは,ピーナッツ咀嚼時よりガム咀嚼時において多くみられた。
3)経時的観察の結果,欠損群において習慣性咀嚼側が非欠損側片側のままの者と,両側へ移行した者とがみられた。また,定型的咀嚼パターンの出現率が上昇変化した者と変化しない者とに分かれた。
以上のことより,乳臼歯一歯のみの早期喪失が,咀嚼機能に少なからず影響を及ぼしていること,また経時的観察により,この機能の改善には個人差があることが示唆された。