1993 年 31 巻 3 号 p. 412-418
近年,光照射によって硬化する,光重合型裏層材が開発され,徐々に歯科臨床に浸透しつつある.しかし歯髄に近接して用いられる材料であるにもかかわらず,生物学的な研究報告は少ない.そこで著者らは,市販の2種の光重合型裏層材についてそのベース材料の同定および,硬化体中の残留量の定量を,HPLC(高速液体クロマトグラム)を用いて行い,次のような結果を得た.
1.光照射前の裏層材1gに含まれる総モノマー量は,IONOSIT® BASE LINER中のBis-GMA;72.88±3.32mg/g,TEDMA;97.26±3.38,ULTRA-BLENDTM中のUDMA;497.95±12.38mg/gであった.
2.残留モノマー量は光照射時間が長いほど少なくなる傾向が見られたが,IONOSIT®BASE LINERで30秒以上,ULTRA-BLENDTMで40秒以上照射してもほとんど変化が見られなかった.
3.残留モノマー量は光照射60秒の時,Bis-GMA;7.63±0.53mg/g,TEDMA;11.88±0.58mg/g,UDMA;91.93±4.63mg/gであった.
以上のことから光重合型裏層材は,硬化体中に残留モノマーが認められることから,少なくとも40秒以上の光照射が必要であることが示唆された.