小児歯科学雑誌
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ヒト乳歯歯根吸収組織における酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性の局在変化に関する研究
渡部 知帆子入江 一元小澤 英浩野田 忠
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1995 年 33 巻 3 号 p. 565-571

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抄録

歯根の安定期および生理的歯根吸収を認める乳歯32本を用いて,破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性(TRACP-ase活性)を検出した後,光学顕微鏡・共焦点走査型レーザー顕微鏡(レーザー顕微鏡)で観察し,乳歯歯根吸収機構の解明を試みた. その結果,歯根吸収のごく初期においては,象牙芽細胞内にレーザー顕微鏡で微弱なTRACP-ase活性が検出された. 歯根吸収の開始した乳歯では,吸収部位から離れた部位のレーザー顕微鏡観察で象牙芽細胞内に顆粒状のTRACP-ase活性が検出され,歯根吸収部位の近くでは,光学顕微鏡でもTRACP-ase活性が検出された. また,これらの部位の象牙前質は厚さが不均一で象牙芽細胞の数は減少し形態は多様化していた. 破歯細胞による石灰化象牙質の吸収が活発に行われている部位では,象牙芽細胞・象牙前質は認められず,破歯細胞と周囲の細胞および破歯細胞直下の象牙細管内に強いTRACP-ase活性を検出した. これらの結果から,本来形成系の細胞である象牙芽細胞も歯根吸収の開始機構に関与している可能性が示唆された. また,活発に吸収を行っている破歯細胞直下では吸収象牙質の深部にわたって吸収が進行しやすい環境がつくられている可能性が示された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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