小児歯科学雑誌
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口腔レンサ球菌によるラクトスクロースの代謝に関する研究
加納 能理子
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1995 年 33 巻 4 号 p. 753-762

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抄録

オリゴ糖の一つである4G-β-D-galactosylsucrose(O-β-D-galactopyranosyl-(1→4)-O-α-D-glucopyranosyl-(1←→2)-β-D-fructofuranoside):ラクトスクロースは,その分子構造にラクトース骨格とスクロース骨格を有し,三次機能としてヒト腸内菌叢の改善を計る効果を持つ甘味度50%~70%の三糖類で,すでに整腸作用を目的として商品化されている. 本研究は口腔レンサ球菌によるラクトスクロースの代謝について検討することを目的として行った.
1)ラクトスクロースを代謝基質とした場合,4種類の口腔レンサ球菌(Streptococcussobrinus 6715,Streptococcus gordonii Challis,Streptococcus sanguis ATCC 15914,Streptococcus oralis ATCC 10557)のうち,ラクトスクロース,ガラクトースで培養したS.oralis ATCC 10557が最も高い酸産生能を示した.
2)S.oralis ATCC 10557によるラクトスクロースの分解は誘導されたβ-galactosidaseによるβ-galactoside結合の加水分解により起こった.
3)S.oralis ATCC 10557におけるβ-galactosidase活性はガラクトース,ラクトース,ラクトスクロースの添加後5分以内に増加が始まった.
4)S.oralis ATCC 10557の誘導されたβ-galactosidase活性は,ラクトスクロースで培養した菌の細胞膜成分で著しく高かった.
以上より,S.oralisATCC 10557は,ラクトスクロースを代謝する際,β-galactosidaseが菌体の細胞膜の外側に短時間で誘導される. これがβ-galactoside結合を加水分解することによりラクトスクロースは菌体内に取り込まれ,酸産生の基質となることが明らかになった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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