小児歯科学雑誌
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下垂体性小人症の1症例
甲田 寿美子太田 慎吾塚田 久美子高井 経之小笠原 正渡辺 達夫笠原 浩
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1995 年 33 巻 5 号 p. 1095-1100

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抄録

下垂体性小人症は,下垂体前葉ホルモンの一つである成長ホルモンの分泌不全の結果として生じた成長障害である.この疾患はしばしば,他の下垂体ホルモンの分泌不全を合併していることがあり,歯科治療上においても特別な配慮を必要とすることがある.
今回我々は下垂体性小人症である9歳(初診時)の男児の歯科治療を経験した.患児はGH分泌完全欠如の他に,副腎皮質ホルモン予備能低下及び甲状腺ホルモン部分欠如が認められ,4歳時より成長ホルモン及び甲状腺ホルモンの投与を受けている.しかし,身体発育に著しい遅れがあり,歯牙年齢は7歳±9か月,骨年齢は5歳と大幅に遅れていた.
初診時の主訴は齲蝕治療で,9歯の齲蝕が認められた.精神発達遅滞の合併があり,歯科治療適応困難であったので,全身麻酔下集中歯科治療により9歯を修復(うち2歯は歯内療法)した.ACTH予備能低下の合併があり,全身麻酔や歯科治療に伴うストレスにより急性循環不全の可能性があると考えられた.集中治療時にはステロイドカバーを行い,円滑な経過が得られた.その後はリコールシステムにより歯科的健康管理を行っている.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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