小児歯科学雑誌
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エナメル質形成不全を誘発したラットの切歯エナメル芽細胞におけるアメロジェニン遺伝子の発現に関する研究
山田 嘉重
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1996 年 34 巻 1 号 p. 182-192

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抄録

Bisphosphonateの全身投与により惹起されるラット切歯エナメル質形成不全の際のアメロジェニン蛋白遺伝子発現の状態を調べる目的で以下の実験を行った。体重約150-160gの雄性Wistar系ラットの背部皮下に1日1回,7日間1-hydroxyethylidene-1,1-bisphosphonate(HEBP)または生理食塩液を投与した。ラットは最終投与24時間後に全身麻酔下にて屠殺後,上顎切歯およびその周囲組織を採取し,組織学的検索およびエナメル芽細胞内のアメロジェニン蛋白遺伝子の発現についてIn situ hybridization法により検索を行った。組織学的観察によると,HEBP投与ラットのエナメル基質形成期に相当する切歯表層に島状のエナメル質とエナメル質形成不全部が交互に出現する像が観察された。アメロジェニンRNAプローブを用いたIn situhybridization法の結果では,基質形成期エナメル芽細胞のアメロジェニン遺伝子の発現はエナメル質形成部,形成不全部に関わらず観察され,さらにその発現の強さは生理食塩液投与ラットの場合とほぼ同程度であった。これらの結果からHEBPを連続投与することにより惹起されるエナメル質形成不全は,エナメル基質形成の障害,特にアメロジェニン遺伝子発現以降の過程に障害が生じて発現することが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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