小児歯科学雑誌
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ヒト乳歯と永久歯歯根膜由来線維芽細胞の増殖と分化および細胞外基質生合成に対するlnsulin_like Growth Factor-Iの影響
松澤 光洋
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1996 年 34 巻 3 号 p. 560-569

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抄録

本研究では,乳歯と永久歯の歯根膜細胞(HPLF-Y,HPLF)に対するインスリン様増殖因子I(IGF-I)の細胞増殖,ALPase活性および細胞外基質タンパク質合成に与える影響について比較検討し,次の結果を得た。
1)IGF-1添加によるwell当たりのDNA量は,両細胞ともに培養12日目まで有意な増加を認め,特にHPLF-Yで顕著であった。
2)細胞の増殖期,集密期,休止期におけるIGF-I添加時のDNA当たりの3H-TdRの取り込み量は,HPLF-Yでは特に増殖期で,HPLFでは集密期と休止期で有意な増加を認めた。
3)IGF-I添加によるALPase活性の応答は,各々のIGF-I非添加群を100%とすると,HPLF-Yでは培養10日目に89%,12日目に52%の有意な減少を認め,HPLFでは培養10日目に196%,12日目に116%の有意な増加を認めた。
4)35S-Metで標識された両細胞の産生タンパク質を陰イオン交換クロマトグラフィで分離後,各分画を比較した結果,HPLFではIGF-I添加,非添加群で35S-Metの取り込み量に差は認められなかったが,HPLF-YではIGF-I添加群のII ,III,IVの分画で35S-Metの取り込み量の減少を認めた。さらに各分画をSDSPAGEで分離して得たオートラジオグラムでは,HPLF-YでIGF-I添加により各バンドで35S-Metの取り込み量が減少したのに対し,HPLFでは増加していた。以上の結果より,IGF-I添加によってHPLF-Yは分化を抑制して増殖を誘導するのに対し,HPLFは細胞外基質形成の増強によって分化を誘導する傾向が示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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