1996 年 34 巻 3 号 p. 698-706
無汗型外胚葉異形成症は,無汗症,減毛症および無歯症を3主徴としている。歯科学的には,歯の形態異常や先天性欠如を伴っており,しかも口腔内の粘液腺も欠如傾向にあるため口腔内が乾燥しやすく,咀嚼困難に陥りやすいなどの問題がある。そこで今回我々は,初診時年齢4歳6か月の患児についての歯科学的特徴や,咀嚼運動の改善を目的として可撤式保隙装置を装着して9か月後の下顎切歯点の運動軌跡,咀嚼筋活動および咬合力などの経時的変化について検索し,次のような所見を得た。
1)発汗機能の消失傾向と自己体温調節の困難。
2)眉毛や頭髪の疎毛化。
3)猫耳傾向。4)_??__??__??_の先天性欠如と_??__??__??_の円錐歯化傾向。
5)咀嚼困難。
6)可撤式保隙装置の装着後の下顎切歯点運動パターン,咀嚼筋活動および咬合力の大きさの向上。