1996 年 34 巻 3 号 p. 753-761
幼若永久歯の外傷歯に対し,レーザードップラー血流計を用いて歯髄血流を測定し,外傷後の歯髄血流の回復過程と歯髄の生死の早期診断法に関して検討した。
レーザードップラー血流計を歯髄血流の測定に用いる場合,その測定値は歯冠色や測定部位あるいはアーチファクトなどの様々な要因により影響を受けるため,測定値がそのまま歯髄血流動態を反映しているとは限らない。そこで,歯髄血流と心電図を同時に測定し,それぞれの波形に対しスペクトル解析を行い,歯髄血流に心拍と同期した拍動が存在するかどうかを診断法の判定基準に加えた。
外傷歯のうち,のちに知覚が回復した症例については,受傷後,早期に歯髄血流の測定が可能であり,また血流に心拍と同期した拍動が確認された。一方,歯髄血流は測定されたものの波形に心拍と同期した拍動が認められなかった症例では,受傷後9か月を過ぎても最終的に知覚の回復はみられず,エックス線写真にて歯髄壊死と診断された。
以上の結果からレーザードップラー血流計を心電計と併用し,それぞれの波形に対しスペクトル解析を行うことにより外傷歯に対し早期に信頼性の高い歯髄診断を行うことが可能であると考えられた。