1997 年 35 巻 3 号 p. 532-536
小児鼻腔内異物は好奇心や悪戯で,無意識に鼻腔内へ物を挿入して起こり,2~4歳児に最も多い.歯科領域においてエックス線診査によって発見されることは,極めて稀である.今回著者らは5歳6か月男児の鼻腔内異物の症例を経験し,以下の所見を得た.
1)定期検診時のオルソパントモグラム上で右側下鼻甲介部に異物を認めた.
2)本学耳鼻咽喉科に対診した結果,鼻腔内異物と診断され,吸引管と鉗子で摘出した.
3)摘出物は直径約6mmの球体で,プラスチック製のオモチャの弾丸であった.摘出後の経過は良好であった.
4)1枚のエックス線写真には,我われ歯科医の予期せぬ異常を発見しうる情報も提供する可能性のあることに注意を払う必要があると考えられた.