1997 年 35 巻 5 号 p. 970-975
今回,著者らは全身の皮膚形成異常および多発奇形を有する6歳11か月の患児の上口唇内側部に複数か所に出現した,孤立性の乳頭腫を経験した.摘出処置にあたり,従来より用いられている病理組織学的診断に先立ち,患部組織より得た微量のウイルスDNAをPCRを応用し,悪性・良性の識別およびヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の型同定という分子生物学的検討を行った結果以下のことが示唆された.
1.分子生物学的検討および病理組織学的診断の両者の結果より,今回摘出した乳頭腫は良性型であった.
2.PCRを用いた分子生物学的検討は簡便かつ迅速な診断に応用でき,今後さらなる発展が期待される.
3.今回,摘出した乳頭腫の型同定を行ったところ,口腔内に出現する頻度の高いHPV-6,11とは異なることが示唆された.