小児歯科学雑誌
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歯科治療時における小児の視知覚分析
歯科医師,歯科衛生士間の器具受け渡しに対する眼球運動
松井 大介鈴木 広幸下岡 正八
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1998 年 36 巻 3 号 p. 478-490

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抄録

歯科治療時の器具の受け渡しが,小児患者の見方に与える影響を知るため,歯科医師と歯科衛生士がミラーとピンセットそれぞれの受け渡し動作を行っているテスト映像を作製,提示し,ビジコンアイカメラを用いて小児の眼球運動を分析したところ,以下の結論を得た。
1.初回停留点の部位別人数は,ミラー受け渡しで歯科医師が20名,母親8名,その他8名,歯科衛生士2名,受け渡し部1名の順で,ピンセット受け渡しで歯科医師が16名,その他9名,歯科衛生士7名,母親5名,受け渡し部2名であった。
2.部位別停留回数は,ミラー受け渡しで受け渡し部152回,歯科医師135回,その他51回,歯科衛生士20回,母親3回であった。ピンセット受け渡しで受け渡し部334回,歯科医師91回,歯科衛生士37回,その他15回,母親8回であった。
3.ミラー受け渡しに87.2%の被験児が反応した。そのうち76.5%が「話しかけ」に,23.5%が「手の動き」に反応した。ピンセット受け渡しに97.4%の被験児が反応した。そのうち92.1%が「話しかけ」に,7.9%が「手の動き」に反応した。
4.ミラーに視線が停留した被験児は23.1%,ミラーの鏡部は5.1%であった。ピンセットに視線が停留した被験児は25.6%,ピンセット先端部は2.6%であった。以上より,小児は歯科医師と歯科衛生士間の器具の受け渡し動作に反応する見方をしているが,受け渡される器具そのものを視知覚から認知していないことが明らかとなった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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