小児歯科学雑誌
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歯科診療における小児が術者に及ぼす心理的ストレスに関する研究
第4報 心理的ストレスと対処行動との関連性
簡 妙蓉石川 隆義長坂 信夫
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1998 年 36 巻 5 号 p. 729-737

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抄録

小児歯科診療にあたり,術者は小児から何らかの心理的ストレスを受けると思われる。ストレッサーを受けた後,人はストレスを適切に処置し,統制していこうとする対処行動(コーピング)を行う。そこで,小児歯科診療において小児が術者に及ぼす術者の心理的ストレスとその対処行動に焦点を当て,どのような関連性をもっているかについて検討を行い,以下の結果を得た。
1.小児歯科診療における小児から受ける術者の心理的ストレス得点は,そのストレスに対する対処行動の頻度とは1%レベルの危険率で有意な相関が認められたが,全体量と強度とは有意な関連が認められなかった。
2.問題中心型では,対処行動の全体量,頻度,強度において高ストレス群と低ストレス群の間で有意差は認められなかった。情動中心型では,対処行動の全体量および頻度において高ストレス群と低ストレス群との問で有意差が認められ,全体量では5%,頻度においては1%レベルの危険率で有意差が認められた。
3.対処行動の6タイプからの検討では,全体量において,「気持ちを何かで紛らわす型」で高ストレス群と低ストレス群との間で5%レベルの危険率で有意差が認められた。頻度については,「気持ちを何かで紛らわす型」と「じっとしている型」が1%で,この2タイプにおいて両群間に有意差が認められた。強度は,全てのタイプにおいて有意差が認められなかった。
以上のことより,小児から受ける術者の心理的ストレス得点とそのストレスに対する対処行動得点には関連性があり,心理的ストレスが増せば対処行動の機会も増すことが示された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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