1999 年 37 巻 5 号 p. 948-952
小児の齲蝕は,咬合機能に為害作用を与えるため,咀嚼器官の正常な成長発育を育成するには口腔諸器官の機能と形態に十分考慮し,修復する必要がある。本研究では,齲蝕重症度指数(CSI)を指標として乳歯列をCD0-6群に分類し,咬合接触面積,咬合力および平均咬合圧力をデンタルプレスケール®50-HのTypeRを用いて評価を行い,齲蝕が小児期の咬合発育に及ぼす影響について検討し,以下の結論を得た。
1.咬合接触面積において,CD0群およびCD1群はCD3群,CD4群,CD5群およびCD6群に比較し,有意に高い値を示した。また,CD2群はCD3群とCD6群に比較し,有意に高い値を示した。
2.咬合力において,CD0群,CD1群およびCD2群はCD3群,CD4群,CD5群およびCD6群に比較し,有意に高い値を示した。
3.平均咬合圧力においては,各群間で統計学的に有意な差は認められなかった。本結果からCSI値が大きくなるに従い咬合接触面積,咬合力は低下することが示唆された。特にCSI値が10より大きくなると咬合接触面積や咬合力は著しく低下することが明確となった。したがって齲蝕の予防はもちろん,齲蝕に対しては,できるだけ早く治療を行い,生理的な咬合発育に近ずける必要があると考えられた。