小児歯科学雑誌
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中国人女児双生児の歯列,顎・顔面頭蓋の成長発育に関する研究
-口蓋三次元形態の発育と遺伝的安定性-
石川 雅章斎藤 美紀桔梗 知明舩山 研司小野 博志鄧 輝
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2000 年 38 巻 5 号 p. 1053-1060

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抄録

混合歯列期の中国人女児双生児59組の歯列模型を横断的資料とする口蓋の形態学的研究を行い,Hellmanの歯年齢IIIAで乳側切歯が咬合しているIIIA-1群,永久側切歯が咬合位に達しているIIIA-2群,Hellmanの歯年齢IIIBのうち犬歯,第一小臼歯が萌出前後で第二乳臼歯が残存しているIIIB群,計3群に分類した発育変化を検討するとともに,双生児法によりそれらへの遺伝的要因の多寡を推定して以下の結論を得た。
1.口蓋幅径,長径については各計測部位とも3群間に有意差が認めらなかった。
2.口蓋深さについては,乳犬歯部でIIIA-2群とIIIB群間に,第一乳臼歯および第二乳臼歯部でIIIA-1群とIIIB群間に有意な発育変化を認めた。
3.口蓋容積では,第一大臼歯後方部のみにIIIA-1群と他の2群間に有意差が認められた。
4.双生児法を用いた遺伝力推定では,口蓋幅径および容積に遺伝的に安定した部位が多く,長径および深さには少なかった。
5.口蓋幅径では,遺伝的に安定している部位が歯年齢の増加とともに後方へ移行した。
6.口蓋容積は各観察期間とも全体として遺伝的に安定していたが,IIIB群を除いて乳犬歯以降の後方部位ほど遺伝力が高くなる傾向が観察された。
7.混合歯列期における口蓋形態は,総体として遺伝的安定性を保ちながら発育していくものの,後方部位の安定度がより高く,一定の幅径のもとに長径と深さは比較的自由度が高い形態形成を行うと推定された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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