小児歯科学雑誌
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歯垢中ミネラル(Ca,P,F)量の口腔内部位特異性について
広瀬 弥奈松本 大輔八幡 祥子五十嵐 清治
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2000 年 38 巻 5 号 p. 965-971

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抄録

歯垢の齲蝕誘発能について口腔内部位特異性を調べるために,上顎前歯部唇側(UAB)と口蓋側(UAL),上顎臼歯部頬側(UPB)と口蓋側(UPL),下顎前歯部唇側(LAB)と舌側(LAL),下顎臼歯部頬側(LPB)と舌側(LPL)の左右両側を合わせた8部位から採取した歯垢中のCa,P,F量を測定し,ミネラル量の部位の差の有無について比較検討した。また,部位別歯垢蓄積量,水分量についても調査し,以下に示す結論を得た。
1)歯垢蓄積量は,湿・乾燥重量ともに,UPBが最も多く,UALが最も少なかった。
2)歯垢の水分量は,UAL以外は,80%前後とほぼ一定の値を示した。
3)歯垢中ミネラル量は,二元配置分散分析の結果,統計学的有意差が認められ,Ca,P量は危険率0.01%で,F量は危険率5%で部位による差が認められた。部位別にはLALが最も高い値を示し,Ca,P量ともにScheffeの多重比較検定において有意性を示した。次いでLPL,UPBとなり,最も低い部位はLPBであった。
以上の結果は,齲蝕は下顎前歯部に少なく,UABやLPBに多発するという齲蝕罹患の部位特異性と一致していた。また,大唾液腺開口部付近(UPB,LAL)ではエナメル質表層のF濃度が高いという歯表面のF濃度分布とも類似していたことから,歯垢中のミネラル分布は,唾液および歯質表層との相互の関連性のあることが確認された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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