2002 年 40 巻 1 号 p. 183-188
今回我々は,流涎と咀嚼機能障害を主訴に来院した患児(5歳1か月,男児)に対し患児の咀嚼機能を詳細に把握する目的で発達検査,口腔摂食機能検査,唾液分泌速度の測定,口唇圧検査,咀嚼筋活動量の検査,デンタルプレスケール®による検査(咬合接触面積,咬合力,平均咬合圧,最大咬合圧),咀嚼能率(篩分法)の測定を行った。
安静時ならびに刺激時唾液分泌速度は基準値の範囲内であった。口唇圧は基準値と比べ大きかった。一方,咬合接触面積,咬合力,平均咬合圧,最大咬合圧,咀嚼サイクル,咀嚼能率は基準値より低かった。咀嚼時間は延長し筋活動量は基準値以上を示した。これらのことから患児は食塊形成能力が低く,食塊が嚥下閾の物性に至らないために嚥下の誘発がおこりにくい状態が続いていることが考えられた。流涎については咀嚼機能の低下によるものと思われた。これらの咀嚼機能の低下と流涎となった背景には,副鼻腔炎による口唇閉鎖不全が大きく影響していることが考えられた。
以上の結果より,今回患児に対して行った検査は咀嚼機能を客観的に評価し,咀嚼の問題点を明確にするとともに,咀嚼機能訓練後の機能再評価の基準となる可能性が示唆された。