小児歯科学雑誌
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ラット下顎第一臼歯部の実験的な歯の移動による歯周組織の変化
床装置モデルとワイヤースプリング装置モデルの比較
荻原 栄和相山 誉夫
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2003 年 41 巻 1 号 p. 94-104

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抄録

小児歯科,歯科矯正臨床において下顎歯列弓側方拡大は一般的な治療方法になっていないが,床矯正装置を用いることを著者らは実践している.本研究は下顎歯列弓側方拡大に対する治療法として,床矯正装置の有効性に関する科学的な根拠を模索するために,床による歯の移動および歯周組織に及ぼす影響について検討した.ラット下顎第一臼歯部に床装置(Ap群)とワイヤースプリング装置(Wi群)を用い,約10gの力を加え,1,3,5,7,14日間頬側移動(拡大)させた.歯の移動距離は左右第一臼歯中心小窩間の距離を計測し,実験期間における有意差の有無を検討した.さらに,頬側歯周組織の変化を,各種染色法による光顕観察,時刻描記法による共焦点レーザー顕微鏡の観察により検討した.その結果,以下のことが明らかとなった.歯の移動量は,Ap群とWi群の間に有意差は認められず,歯の移動パターンは,Ap群では5相性を示していたが,Wi群では3相性を示していた.歯の移動にともなう圧迫側の変性組織は7日目まで両者にみられたが,Ap群では14日目において消失していた.頬側歯槽骨の改造現象は,Ap群では歯槽骨骨膜面の歯槽頂から基底側に及んでいたが,Wi群は歯槽頂のみに骨添加がみられた.以上から,小児期における咬合誘導の一処置として下顎歯列弓側方拡大が行える基礎的資料の提供と共に理論的根拠の一端が明らかとなった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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