2004 年 42 巻 3 号 p. 430-435
重度精神発達遅滞者では,食事環境において誤燕の危険が指摘されており適切な対応が望まれている。本研究では,重度精神発達遅滞者の摂食・嚥下機能の特徴を明らかにすることを目的とし,福祉施設における精神発達遅滞者(41名,41.6±10.9歳)を対象に,嚥下可能な食事内容の調査を行い,さらに口腔機能の障害度,日常生活活動状況との関連性について定量的に検討した。
嚥下可能な食事内容の調査では,嚥下の難易度を基準として,食物の形態(以下,食形態)を,咀嚼の必要がなく嚥下可能な食形態から常食の形態までの6段階に点数化し食形態スコアとした。
口腔機能の障害度は,摂食時における口唇閉鎖不全や舌の運動障害などを指標として,点数化し評価した。日常生活活動は,機能的自立度評価法(FIM)により運動の自立度について評価した。
その結果,以下の知見を得た。
1.食形態スコアと口腔機能障害度との相関性を検討したところ,有意な正の相関関係が認められた(P<0.05)。
2.食形態スコアとFIMの運動項目との相関性を検討したところ,有意な負の相関関係が認められた(P<0.05)。これらのことから,重度精神発達遅滞者の摂食・嚥下機能は,口腔機能や日常生活活動の運動機能と関連していることが明らかになった。