小児歯科学雑誌
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中国人の永久歯エナメル質表層における歯面部位別フッ素濃度分布
八幡 祥子広瀬 弥奈松本 大輔五十嵐 清治
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2004 年 42 巻 4 号 p. 541-548

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抄録

齲蝕罹患の部位特異性や増加に及ぼす影響を,宿主(歯質)側の要因から明らかにするため,中国北京市で得られた上・下顎中切歯および第一大臼歯の4歯種を対象に,マイクロサンプリング法を応用して歯面部位別のエナメル質表層F濃度について測定し,以下の結論を得た。
1.各歯のエナメル質表層F濃度は,いずれの深さにおいても歯面部位別な有意差は認められなかった。
2.測定した12歯面部位の中で最もF濃度が高かった部位の濃度を100%とした場合のF濃度分布は,表層の1,3,5μmにおいて唾液クリアランスの良い部位やプラークの蓄積量の多い部位(下顎中切歯舌側面,上顎第一大臼歯頬側面,下顎第一大臼歯舌側面)ではF濃度が高く,反対に唾液クリアランスの悪い部位やプラークの蓄積量の少ない部位(上顎中切歯唇側面,上顎第一大臼歯口蓋側面,下顎第一大臼歯頬側面)ではF濃度が低かった(p<0.05)。
以上より,唾液,プラークなどの口腔内環境因子がエナメル質表層におけるF濃度分布に影響を与え,齲蝕発生の部位特異性に関与していることが推察された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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