著者らは,復元学校給食を用いて,主食の違いが咀嚼に与える影響について検討を行ってきた.本研究では,給食の副食のみを変え,3種類の硬さの異なる食品にすることで,咀嚼とそれに関連する摂食がどのような影響を受けるかについて実験を行った.また,食品の違いが咀嚼に与える影響を明確にするために,各食品を単品で摂取した際の変化についても検討した.
その結果,副食の硬さを変化させても,それぞれの給食を食べ終えるまでの咀嚼時間や咀嚼回数には大きな違いを認めなかった.各食品を単品で摂取した場合にも,それぞれの食品間で,一口あたりの咀嚼時間や咀嚼回数に違いは認められなかった.一方,一口あたりの摂取量では,最もやわらかいコロッケが最も多いという結果が得られた.
以上より,摂取する食品の物性が変わっても,一口あたりの咀嚼回数や咀嚼時間は一定となるように,認知期での高次脳機瀧によって一口量は調節されていることが考えられた.このような一口量の調節は,個人の摂食能力や食経験に応じて獲得されていくものであろうと推察される.したがって,食経験の浅い小児では,一口量の判別能力が成長発育に応じて無理なく獲得できる食環境を整える必要があると思われた.