小児歯科学雑誌
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ミュータンスレンサ球菌およびその他の口腔レンサ球菌の小児プラーク中への定着と齲蝕との関連性
原田 利佳子
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2006 年 44 巻 1 号 p. 8-17

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抄録

ミュータンスレンサ球菌(Streptococcus mutansおよびS. sobrinus)の小児口腔への定着と他の口腔レンサ球菌の定着状況・時期との関連性を明らかにする目的で,本研究では,gtf遺伝子あるいは16 S rRNA遺伝子を標的とするS. mutans, S. sobrinus, S. sanguinis, S. oralisおよびS. salivarius特異的PCR法を開発した。本PCR法の特異性と感度を検討した結果,前報のS. anginosus特異的PCR法とともに,いずれも高い菌種特異性と検出感度(0.5~5 pg DNA, 100 CFU)を示した。そこで本PCR法を用いて,320名の小児(0~15歳,各年齢毎20名)を対象に,ミュータンスレンサ球菌およびその他の口腔レンサ球菌のプラーク中への定着と齲蝕との関連性について検討を行った。その結果,被験7菌種中ではS. mutansの検出率が最も高く,S. sobrinusS. gordoniiの検出率は低いことが明らかとなった。S. sobrinusS. mutansが検出された試料のみから検出された。また,S. mutansおよびS. anginosusの検出率は増齢に伴い上昇し,S. sanguinisの検出率は低下することが明らかとなった。しかし,齲蝕との関連性についてはS. mutansの検出とのみ有意の正の相関性が認められた。以上の成績より,今回開発したPCR法は高い感度と特異性を有することが明らかとなった。さらに,本法を用いた研究から,ミュータンスレンサ球菌および他の5菌種の口腔レンサ球菌の多くは早期に小児プラーク中に定着し,増齢とともにS. mutans, S. anginosusの定着率の上昇とS. sanguinisの定着率の低下といった定着状況の動的変化が起こることが示唆された。しかし,被験7菌種の口腔レンサ球菌中ではS. mutansの定着が小児期の齲蝕発生の最も重要な要因となることが強く示唆された。

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