小児歯科学雑誌
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マウス臼歯咬耗の確立と遺伝要因の検討
小川 京
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2007 年 45 巻 1 号 p. 16-28

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抄録

本研究は,系統間における咬耗の感受性の比較や咬耗させやすい飼料の探求,咬耗における遺伝要因の有無について検討することを目的として,C 57 BL/6およびC 3H系統マウスを性状および組成の異なる4種類の飼料(固形と粉状の標準食および高脂食)下にて飼育し,臼歯咬耗状態を比較した. 実験開始の21日齢よりそれぞれの飼料を与え,150日および240日後に各群5匹ずつ下顎をMicro-CT撮影し,咬耗面の面積を測定することによって,咬耗状態を評価した. すべての実験群において,咬耗はC 57 BL/6系統よりもC 3H系統が大きかった. 各飼料間では,粉状高脂食マウス群が最も咬耗し,系統間における感受性が明らかに異なった. またMicro-CTは解像度が高く,マウスの咬耗を評価するのに有用であると考えられた.
以上のことから,C 57BL/6系統を咬耗低感受性マウス,C 3H系統を咬耗高感受性マウスとし,F1(8匹)およびF2(16匹)マウスを粉状高脂食下にて240日間飼育し,Micro-CT撮影を行い,咬耗面の面積を測定することで咬耗状態を評価した. 親系統の測定値より判別境界値を求め,F1およびF2マウスを咬耗高感受性と低感受性に分類したところ,F1マウスは8匹すべて咬耗低感受性であったのに対し,F2マウスは咬耗高感受性7匹,咬耗低感受性9匹に分類されたことから,咬耗に遺伝要因が強く関与することが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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