小児歯科学雑誌
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唾液バイオマーカーによる障害児のチェアーサイドにおけるストレス評価の有用性の検討
園本 美惠大東 道治
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2008 年 46 巻 5 号 p. 524-532

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抄録

不快ストレスは歯科診療に支障をきたす場合があり,歯科診療時に患児が不快ストレスをどの程度受けているかを把握するため,不快ストレスを客観的に迅速評価することは重要な課題である。本研究では唾液のα-アミラーゼ活性をチェアーサイドで測定し,歯科診療時の健常児と障害児におけるストレスの比較検討を行った。対象は大阪歯科大学附属病院小児歯科・障害者歯科外来を受診した2歳から15歳までの健常児58名,障害児34名とした。診療前後のα-アミラーゼ活性は携帯型アミラーゼ活性分析装置(ヤマハ発動機(株)製)を用いて比色法で測定した。不適応行動により健常児ではα-アミラーゼ活性は有意に変動した(p<0.05)。一方,障害児では有意な変動は認められなかった。障害児は健常児と比較して診療前後ともにα-アミラーゼ活性が有意に高くなっていた(p<0,05)。また,種々の診療内容による分類においてα-アミラーゼ活性の変動は認められなかったため,障害児のストレスを唾液のα-アミラーゼ活性を用いて定量的に評価するのは困難であった。一方,健常児のストレスを客観的に評価する方法として唾液のα-アミラーゼ活性の測定は有用であった。障害児においてストレスに対する反応が健常児と異なる可能性があり,障害児のストレスを客観的に評価するためには唾液のα-アミラーゼ活性に替わる新規バイオマーカーが必要であると示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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