小児歯科学雑誌
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歯髄細胞における軟骨分化能の解析
藤田 規正竹安 正治大東 道治
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キーワード: 歯髄, 幹細胞, 軟骨
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2008 年 46 巻 5 号 p. 548-554

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抄録

今回の研究では,ラット歯髄細胞のin vitroにおける軟骨細胞系譜への分化能について検討した.ヒト骨髄で行われているin vitro分化誘導系を応用して軟骨分化誘導を試みた.骨髄細胞と同様に歯髄に存在する細胞にも多分化能があると考え,これまでに骨芽細胞,神経細胞への分化能について報告した.また,歯髄に存在する幹細胞の特性についても報告してきた.そこで今回は,歯髄細胞における軟骨細胞への分化誘導を試みた.実験動物として5週齢のWistar系ラットを用いた.分化誘導材として,L-プロリン,アスコルビン酸二リン酸,リノレン酸,インシュリントランスフェリン,デキサメタゾン,TGF-β1,BMP-2を用いた.初代培養開始後の分化誘導前において歯髄にAGC1およびCOL2A1を発現する細胞は存在しなかった.このことから,歯髄細胞には軟骨細胞の存在は示されなかった.また,mRNA発現定量解析においてAGC1は,分化誘導前と比較して分化誘導後において約1.67倍の発現を示した.一方,COL2A1については,mRNA発現定量解析から,分化誘導前と比較して分化誘導後の方が1.62倍の発現が認められた.分化誘導後におけるアルシアンブルー陽性細胞数の増加や,mRNAにおけるAGC1,COL2A1が発現していることから,歯髄細胞が軟骨細胞系譜への分化過程にあることが示唆された.以上の結果から,ラット歯髄細胞に多分化能を有する可能性が示唆された.この多分化能を有する歯髄幹細胞が今後の組織工学や再生医療にとって非常に有用であると思われる.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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