小児歯科学雑誌
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マウスにおける自然発症唇顎口蓋裂と母体環境との検討
韓 娟姚 睿李 萌横屋 知恵子朝野 崇横山 伸夫松村 東栄阿保 憲興Elif Bahar Tuna前田 隆秀
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2008 年 46 巻 5 号 p. 570-577

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抄録

本研究の目的はマウス唇顎口蓋裂の自然発症と環境要因の一つである母体環境との関連性を検討することである.著者らは近交系A/WySn系統マウス(以下,Aマウスとする)と近交系C 57BL/6系統マウス(以下,B6マウスとする)を用いて遺伝学的に交配し,N2[A×F1(A×B6)](× の前が母獣,× の後が父獣.F1;AとB6の交雑マウス)とN2[A×F1(B6×A)]であるN2[A×F1]およびN2[F1(A×B6)×A]とN2[F1(B6×A)×A]であるN2[F1×A]戻し交配マウス(以下,N2マウスとする)胎仔を得た.以上の4群に分類したN2マウスにおいて母体によっての胎仔の吸収状況,胎仔の生存状況,唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣の状況,また,生存胎仔において唇顎口蓋裂の発症率を調べた.その結果,N2[A×F1]はN2[F1×A]と比較し,胎仔の吸収率が高く,胎仔の生存率が低かった.また,N2[A×F1]の方が唇顎口蓋裂の発症率が高く,そのうち両側性唇顎口蓋裂の発症率が片側性唇顎口蓋裂の発症率より高かった.また,A×F1において唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣Aマウスの比率は高く,さらに2匹以上の唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣が認められた.一方,F1×Aにおいて唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣F1マウスの比率は低く,2匹以上の唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣は認められなかった.従って,A母体の環境は胎仔の吸収率を高め,胎仔の生存率を低め,また唇顎口蓋裂を発症しやすく,胚胎の成長発育に不良な環境を提供すると考えられ,唇顎口蓋裂発症は母体の環境に影響されることが強く示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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