日本体育学会大会予稿集
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第69回(2018)
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企画シンポジウム3
学会の改革戦略を探る:学会の社会的使命・将来像・名称
清水 紀宏
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p. 10_1

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抄録

 日本体育学会では、第40回大会シンポジウム「学会改革の方向を探る」(1989)以降、幾度となく改革論議が繰り返されてきた。特に、このシンポジウムにおいて、学会のマンモス化と学問分野の細分化(スポーツを冠する独立学会組織化の動き)が急速に進行する中で、その統合を図るために組織と機能をどう変革していくかという問題とともに、学会の名称問題も提起されたことは特筆すべきである。2名(文系・理系の会員)の登壇者はいずれも、1)研究の「教育離れ」、2)体育概念の混乱、3)没価値的用語としての「スポーツ」概念の有用性等々の理由から、新たな名称への変更を契機にアンブレラ学会としての再構築を提案した。その後、第47、48、49回大会と3年連続で「体育学の分化と統合」と題するシンポジウムが開催され、体育学のアイデンティティについて継続的な議論が重ねられた。こうした熱い改革論議を経て、2000年には学会の英語名・学会誌名が、physical educationからphysical education, health and sport sciencesへと改称されることが承認された。その後も、アダプテッド・スポーツ科学(2005)介護・健康づくり(2007)の専門領域が新設されるなど、学会の内部改革は続き研究範囲は広がるばかりであるが、会員の研究領域を総称する学会名そのものは据え置かれたままである。

 他方、学界をとりまくスポーツ界では、スポーツ庁の設置、日本スポーツ協会への改称などに代表されるように「体育からスポーツ」への移行が近年急ピッチで進んでいる。また、多くの研究者会員の職的基盤となる高等教育機関の学部・学科・専攻等の名称も同様の傾向が強まっている。

 本シンポジウムでは、こうした長年にわたる学会内での議論の積み重ねと内外の環境変化を勘案しながら、学会の持続的発展に向けて、学会名称とミッションを含めた改革戦略の道筋を多くの会員とともに議論したい。

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