日本体育学会大会予稿集
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第69回(2018)
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一般研究発表(12) スポーツ人類学
12人-24-口-02 運動部員の体罰被罰時に持つ感情の多様性と引退後に行う意味解釈の共通性
B高校男子ハンドボール部の事例を中心に
*庄形 篤
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p. 276_2

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抄録

 運動部活動(以下、部活動)における体罰問題は現在も未解決のままであり、根絶の風潮とは裏腹に体罰が伏在していることは昨今の新聞記事や調査結果が物語っている。本発表は、過去に体罰が行われていたB高校男子ハンドボール部の元部員を対象としたインタビュー調査とフィールドワークをもとに行うものである。その際、体罰を当該部活動における文化要素の1つと捉え、当該部活動における意味をイーミックな視点から言及する。その結果として、部員は、被罰当時は体罰に関して個々人で多様な感情を有するものの、引退後にはみずから体罰に「成長」という共通の肯定的意味を付与し、体罰合理化に至ることが明らかになった。当該集団の精神文化から考えると、被罰当時の体罰に関する多様な感情は暗黙のコード「主体性」を体現したものであると考えられる。一方で、体罰に付与された「成長」という意味は、当時の活動のなかで重要視されていたわけではないにもかかわらず、部員の引退後の意味解釈においては共有されており、「成長」が部員の体罰肯定意識の形成過程においても重要な役割を担っていると考えられる。

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