日本体育学会大会予稿集
Online ISSN : 2424-1946
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第70回(2019)
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組織委員会・体育史専門領域合同シンポジウム(一般公開)
自立・自律した個人に価値をおく社会における体育・スポーツ
─福澤諭吉とその時代に手がかりを求めて─
來田 享子鳥海 崇
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p. 14

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抄録

 自立・自律した個人が生きる自由な現代社会には、どのような体育・スポーツの価値が求められるのだろうか。個人が抑圧される事例に関しては、過去の体育学会においても、体罰・暴力・性暴力、行き過ぎた勝利至上主義、ブラック部活など、個別の事象に着目した検討が行われてきた。本シンポジウムでは、自立・自律した個人を模索する思想とそれが実践されようとした過去の時代/社会を交差させた立場からの検討を試みる。

 個人を抑圧する社会の最も極端な姿は、第二次世界大戦に向かう日本にみられる。しかし、それ以前、近代社会がめざされた1800年代半ば以降には、新しい時代に見合う、自立した近代的な個人を模索する営みが存在した。シンポジウムで焦点をあてる福澤諭吉は、慶應義塾という教育機関を設立することによって、時代の模索を実践しようとした人物の一人であった。さらに、同じ時期に発展した中・高等教育機関における部活動/体育会活動は、こうした営みと無縁ではなかったと考えるべきであろう。

 こうした時代の思想と実践を切り口に、シンポジウムでは、4名の登壇者に報告をお願いする。中澤氏には当時の部活動の発展、山内氏には慶應義塾における体育・スポーツ観、大久保氏には福澤思想の地方への波及、という3つの側面からそれぞれ光をあてていただく。さらに、都倉氏には、3名の登壇者が光をあてた体育・スポーツの価値が戦時期の個人に対する抑圧とどのように相克することになったのかを示していただく。

 社会学、思想史、地方史、政治史を専門とする4名による多角的なアプローチに加え、このシンポジウムでは、一定の方針の下で収集管理された様々な歴史的資料(アーカイブ)が継承する知の可能性についても検討したい。

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© 2019 一般社団法人 日本体育学会
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