体力科学
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運動時における副睾丸脂肪組織の脂肪分解能について
小林 啓三永井 猛酒井 敏夫岩垣 丞恒
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1979 年 28 巻 3 号 p. 265-270

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抄録

13週令雄性ラットにトレッドミル走 (25m/分, 傾斜2度) を負荷し, 運動の経時的変化にともなう血中諸物質 (glycerol, 乳酸, 遊離脂肪酸) とin vitroにおける副睾丸脂肪組織の脂肪分解能との関係から運動時の脂肪組織での脂肪分解機構を知ろうとし, 以下の結果を得た。
1) 血漿中FFA並びにglycerolは走行30分時から両者共に増加し, exhaustionli寺にはglycerolのみがさらに増加した。
2) 血中乳酸は走行開始10分時並びにexhaustion時に大きな増加が観察された。
3) in vitroでの脂肪組織の脂肪分解能はbasal lipolysisで運動時間の延長にともなう変化は認められなかった。一方, norepinephrine添加時のlipolysisは運動時間の延長にともなって減少した。
4) 血漿中FFA並びに血中乳酸と脂肪組織でのnorepinephrne添加時のlipolysisとの関係は, それらの物質の濃度が増加するにつれlipolysisは抑制された。
以上の結果から, norepinephrineによる脂肪分解促進作用は遊離脂肪酸並びに乳酸により抑制されるものであり, 運動時に認められる血中遊離脂肪酸の上昇を単にnorepinephrineの増加による脂肪分解の促進のみでは説明できず, 他のホルモン又はそれらホルモンの相互作用を考える必要があると考えた。

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