体力科学
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栄養判定指数と骨発育成熟度との関連に関する研究
小西 博喜大山 良徳
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1982 年 31 巻 2 号 p. 82-93

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抄録

骨発育成熟度と初潮年令, あるいは, 身体発育変量などの関係については, 井上, 清水9) や高
石, 藤村24) , 木村12) らの業績がある。これらの研究は, いずれも骨発育成熟度と身体発育との関係を単独変量相互間の関係によって明らかにされている。そこで, 本研究は身長・体重・座高を複合変量とする栄養指数と骨発育成熟度との関係を11項目相互間の相関係数によって考察し, 栄養指数による骨発育成熟度評価のための推定の範囲とその関連を明らかにした。そして, レントゲンによる骨発育成熟度評価を用いないで, 栄養指数値から直接骨発育成熟度を推定する方程式と95.5%の信頼度における評価範囲を明示しようと試みた。
また個体別栄養指数をgood-poorの各groupに分類して差の検定を行ない栄養指数が骨発育成熟度を知る1指標となるか否かについても言及した。
1) 第2次性徴期にある男子の栄養指数と骨発育成熟度 (中節骨) との相関係数についてみると, Rohrer指数 (r-0.325) , Kaup指数 (r=0.415) , Kawahata指数 (r-0.485) で各指数ともに有意な相関が認められた。また女子についても, Rohrer, Kaup, Kawahata指数の3つの栄養指数は, 前腕骨, 手根骨を除きその他の骨部位とはいずれも有意な相関を示すといった特徴が認められた。
とくに, 三節骨合計ないし中節骨との相関が高かった。ちなみに, 男女共通の変量として考えられた中節骨と各指数とのそれぞれの相関係数は, Rohrer指数: 0.458, Kaup指数: 0.540, Kawahata指数: 0.424であった。
2) したがって, 上記の考察結果より骨発育成熟度を評価しようとすれば, 女子の場合, やや精度は低下するが, 実用性ないしは共通性という立場から考察すると, 男女とも巾節骨によって骨発育成熟度を推定することができるであろう。
3) 栄養指数から骨発育成熟度を推定する式と推定範囲を本研究の限界内で本文中に示した。いずれも推定式に代入して求められた推定値の平均値と, 実測値との差に有意性が認められなかったこと, また推定値と実測値との相関係数において各指数いずれも高い有意性を認めたこと, さらに, 推定値の標準誤差がきわめて小であったことなどから, 個人的診断評価および集団的診断評価の目やすとして, ここに明示された推定式はいずれも信頼度が高く適用できると考えられる。
4) 栄養指数によって区分された2群間における骨発育成熟度差を比較した場合, 男子Rohrer指数では骨発育成熟度に有意性は認められなかったが, Kaup, Kawahata指数はともに基節骨を除き, その他のすべての骨部位では有意性が認められた。
一方, 女子では3指数とも骨発育成熟度は2群間に有意差が認められた。
したがって, 発育段階にある中学生の栄養指数から骨発育成熟度を評価する場合, 栄養指数は骨発育成熟度を推定する1つの指標になりうるであろう。
稿を終るに当り, ご協力をいただいた京都産業大学名誉教授大原純吉先生ならびに京都女子大学三宅義信教授に深甚なる謝意を表します。

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