体力科学
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食餌制限下での運動がラット生体内タンパク質代謝に及ぼす影響
佐藤 智明坂元 晃史中川 喜直井川 正治広田 公一
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1988 年 37 巻 2 号 p. 183-191

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抄録

Wistar系雄ラット (5週齢, 体重1009前後に, 12週間の食餌制限及び食餌制限下でトレッドミルを用いて運動負荷を実施し, それが各組織・器官のタンパク質代謝に如何なる影響を及ぼすかについて検討した.食餌制限は対照群の自由食餌量の2/3量とし, 運動の条件は, 毎分30m, 一日60分, 週6日とした.食餌制限の影響, 食餌制限下での運動の影響について, 次の様な知見を得た.
A.食餌制限の影響 (対照群との比較)
1.体重の減少
体重当りの組織・器官重量の増加
2.タンパク質含量の減少―腓腹筋, 肝臓及び腎臓
3.14C-amino acid mixtureの取り込みの抑制―脳, 腎臓
B.食餌制限下での運動の影響
1.対照群との比較
1) 体重の減少
体重当りの組織・器官重量の増加
2) タンパク質含量の減少―腓腹筋, 肝臓及び腎臓
3) 14C-amino acid mixtureの取り込みの抑制―脳, 腎臓
2.食餌制限下での安静群との比較
1) 体重の減少
体重当りの組織・器官重量の増加
2) タンパク質含量の減少―腓腹筋
長期間の食餌制限により, 脳以外のタンパク質含量の減少及び脳のタンパク質含量の維持が観察されたことから, 過酷な環境下における生命維持の合目的的な体内機構の存在が示唆された.また, この様な食餌制限下で, 運動を負荷すると, 腓腹筋のタンパク質含量が減少したことから, 特に骨格筋のタンパク質が運動のエネルギー源として動員されたものと推察した.
本研究の要旨は, 第42回日本体力医学会 (沖縄, 1987年10月) において発表した.

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© 日本体力医学会
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