体力科学
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相対的強度の等しい前腕と下腿の同時運動に対する呼吸循環系応答
加賀谷 淳子水口 由紀高平 稚子片山 幸子
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1991 年 40 巻 5 号 p. 447-454

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抄録

本研究は, 相対的筋収縮強度の等しい (1/3MVC) 動的運動を前腕と下腿に同時に行わせて, 筋群の増加に伴う呼吸循環系応答の抑制的加算がこの運動条件で生ずるかどうかということと, 2部位の活動筋への血流量が互いに制限しあうかどうかを明らかにすることを目的にしている.被検者は活動的な女子大学生9名であり, 対象とした運動はテンポ60回/分の掌握運動〔H〕と足底屈運動〔P〕および前腕・下腿同時運動〔H+P〕であった.いずれも運動時間は60秒である.得られた結果を要約すると以下の通りである.
1) 掌握力と足底屈力を同時に発揮させると, どちらもそれぞれを単独で発揮したときより小さくなり, 特に足底屈筋力の低下は有意 (p<0.01) であった.
2) 1/3MVC負荷での動的掌握運動〔H〕あるいは足底屈運動〔P〕を, それぞれ単独に60秒間行った時の活動肢の血流量 (FBF, CBF) は9.64±1.00ml・100ml-1・min-1と12.72±0.72ml・100ml-1・min-1に増加した.
3) 単独運動〔H〕時の非活動肢のCBFは有意の変化を示さなかった.単独運動〔P〕時の非活動肢の血流量FBFも運動直後は安静時より高い平均値を示したものの, 有意差はなかった.
4) 両体肢を同時に運動〔H+P〕させた直後の血流量は, FBF, CBFともに, 単独運動直後の平均値と有意差はなかった.
5) 運動終了時の血圧は, 収縮期, 拡張期ともに〔H〕運動がもっとも高く, 〔H+P〕運動に比べて有意であった.しかし, 平均血圧は, 3運動間に有意差はなかった.
6) 同時運動〔H+P〕のHR, Vo2はそれぞれ100.2±4.6拍/分, 7.84±0.77ml・kg-1・Min-1であり, 〔H〕より有意 (P<0.01) に高かったが, 〔P〕と比べると, どちらの平均値も有意差はなかった.安静時からの増加分を比較しても, 〔H+P〕運動時のHR, Vo2は単独運動〔H〕と〔P〕のHR, Vo2を加算したものより小さかった.
7) 本研究の結果から, 1/3MVCに相当する張力を発揮して行う前腕と下腿の60秒間同時運動では, 両体肢への血液供給は互いに制限し合うことなく, 単独運動時と同レベルの血流量が確保さ れることが示された.それにも拘らずHR, Vo2は単純加算より小さくなっており, 全身的な呼吸循環応答に見られる抑制的加算は活動筋への血流減少がなくても起こりうることが示唆された.

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© 日本体力医学会
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