体力科学
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換気性閾値強度の運動が運動後過剩酸素消費量の量・持続時間に及ぼす影響
長野 真弓白山 正人平野 裕一宮下 充正
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1992 年 41 巻 4 号 p. 436-446

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抄録

トレーニングを行っていない健康な成人男性9名を被検者として, 運動処方の有効な指標となっている換気性閾値 (ventilatory threshold: VT) 強度の運動がその後の過剰酸素消費量 (excess postexercise O2 consumption: EPOC) に及ぼす影響を調べた.
被検者は, 早朝空腹時に快適なソファーで30分間座位安静を保った後, VT強度で自転車エルゴメーター駆動を1時間行った.運動終了後はソファーで12時間座位安静を保ち続けた.また, 運動終了後24時間目にも前日と同じ要領で座位安静をとった.その間, 採気・心拍数の測定を行い, 運動が終了して2, 7, 12時間後には高糖食を摂取させた.この測定の他に, コントロールとして, 運動を行う代わりにソファーで1時間座位安静を保ち, その後も12時間にわたって座位安静を保つ非運動実験を行った.
運動 (座位安静) 前の安静値と運動 (座位安静) 後の値を比較したところ, EPOCは食事あるいは運動の影響を受けて, 有意に変動することがわかった.また, VT強度の運動を1時間行うと, EPOCは少なくとも12時間にわたって運動を行わない場合より増加し, 脂質代謝も少なくとも24時間にわたって高まることが示唆された.さらに, 運動後12時間で, 運動中の消費エネルギー (約550kcal) の22% (約120kcal) のエネルギーが過剰に消費されることがわかった.以上のことから, この結果は運動に対する動機づけやウエイトコントロールなど, 運動処方の場で有効に活用できると考えられた.

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© 日本体力医学会
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