体力科学
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慢性的な過負荷に伴う骨格筋の収縮特性, 筋線維タイプ, ミオシン重鎖アイソフォーム組成の変化
山内 秀樹辻本 尚弥米本 恭三
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1996 年 45 巻 1 号 p. 199-207

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抄録

協同筋切除による慢性的な過負荷が骨格筋に及ぼす影響を検討するため, F344系雌ラットの両後肢腓腹筋の末梢1/3を切除した.3週間の自由飼育後, 足底筋の収縮特性, 筋線維組成, ミオシン重鎖組成を調べ, 同週齢の模擬手術対照群と比較し, 以下の結果を得た.
1.協同筋切除により足底筋重量は20%増加した.筋線維サイズはいずれのタイプにおいても著しい増加が見られ, その増加率はIIc>I>IId>IIa>IIb線維の順に高かった.
2.協同筋切除により, 強縮刺激前後の単収縮における収縮・弛緩時間は変化しなかったが, 疲労耐性は著しく増加した,
3.協同筋切除により, IIb線維本数比の減少とIIc線維本数比の増加が認められた.面積占有率の変化ではIIb線維の減少とIId, IIa, IIc線維の増加が観察された.また, 過負荷足底筋のtypeIIb線維は他の筋線維に比べ, SDH染色濃度は低かった.
4.各タイプの筋線維面積占有率の変化と同様, ミオシン重鎖組成においてもIIbの減少及びIIdの増加がみられたが, IIaとIの比率変化はみられなかった.
以上の結果から3週間の慢性的な筋への過負荷はMyoHC IIbの減少とMyoHC IIdの増加を引き起こし, MyoHC IIbからIへの移行過程であると思われた.このMyoHC組成の変化は単収縮・弛緩時間には影響しないものの, 疲労耐性の増加を引き起こすことが示唆された.

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© 日本体力医学会
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