体力科学
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振幅スペクトラムと相互相関法からみた上腕二頭表面筋電位の特徴
加茂 美冬CSUKAS ATTILA森本 茂
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2001 年 50 巻 4 号 p. 501-512

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抄録

近年報告された表面筋電位の構成に関する提唱1) が上腕二頭筋においても成り立つかを検証することを目的とした.等尺性肘関節屈曲筋力発揮時, 上腕二頭筋から表面単極法で導出 (筋長軸方向に4カ所) した筋電位からFFT法により振幅スペクトラムを求めた.振幅スペクトラムから境界周波数 (TF) を見出し, 次にこのTFを遮断周波数として用いて表面筋電位から高周波数成分 (HFC) と低周波数成分 (LFC) とを抽出した.相互相関法をHFC間とLFC間に適用し, 伝導性を検討した.
1) 各々の被験者において, TFは電極装着位置に関わらずに一定値をとった.発揮筋力に対して, TFは一定の変化様式を示さなかった.
2) 全ての被験者で10%MVCまでの筋力発揮において, LFC間, HFC間の相互相関係数は時間0秒で最高値を示した.20%MVC以上の筋力発揮時のLFCでは, 最高値出現が0秒に保たれる被験者群と最高値に低下と時間遅延を示す被験者群に2分された.また, 20%MVC以上の発揮筋力時のHFCでは, 係数は低くなるものの0秒に一致して最高値を示す被験者群と係数の低下とともに複数のピークを示す被験者群がみられた.
3) 20%MVC以上で時間遅延がみられたLFCについて伝導性を評価したところ, 16.1m・s-1~33.3m・s-1の速度が得られた.
近年提唱された表面筋電位の構成機序1) は, 筋線維の中央に運動終板が分布し起始から付着までの長さを持つ筋線維から成る内側広筋での事象であった.TFと発揮筋力との関係及び10%MVCで表面筋電位HFC間, LFC間に位相の一致が見られたことは, 上腕二頭筋表面筋電位の構成が内側広筋と異なることが示唆された.筋電位構成の差異は運動単位の筋線維構造, 神経支配様式に起因するものと考察した.

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