体力科学
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等尺性抵抗運動が非荷重に伴う骨密度低下とその回復に及ぼす影響
山内 秀樹益子 詔次木村 真規宮野 佐年米本 恭三
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2003 年 52 巻 1 号 p. 119-130

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抄録

若齢ラットを用い, 非荷重ならびに再荷重に伴う脛骨の変化と等尺性抵抗運動の効果について検討し, 以下の成績を得た.
3週間の非荷重により脛骨全体の脱脂乾燥重量, 骨塩量, 骨密度はそれぞれ8%, 10%, 6%低下した.脱脂乾燥重量と骨塩量は3週間の再荷重により対照レベルに回復したが, 骨密度の回復はみられなかった.
長軸に沿って7等分された領域別 (近位からR1~R7) に骨密度を測定した結果, 非荷重による骨密度の低下はR1~R4とR7で観察された.骨密度の低下率は部位により異なり, とくにR1で顕著であった.また, R2~R4の骨密度は再荷重後も対照群に比べ低値のままであった.
骨幹部の静的3点曲げ試験による最大破断荷重, エネルギー量, 変形量に非荷重や再荷重による影響はみられなかった.
非荷重はヒラメ筋 (-38%) , 足底筋 (-14%) , 腓腹筋 (-25%) , 前脛骨筋 (-8%) , 長指伸筋 (-8%) , 大腿直筋 (-17%) の重量低下を引き起こしたが, ヒラメ筋を除くすべての筋の重量は再荷重により回復した.
等尺性抵抗運動は非荷重によるヒラメ筋と腓腹筋の重量低下を軽減したが, 再荷重による筋重量の回復を助長しなかった.また, 骨密度の非荷重による低下や再荷重による回復に対する影響も観察されなかった.
以上の結果から, 1) 骨密度の領域別解析は局所における骨代謝の評価として有用である'2) 荷重条件の変化に対する骨応答は必ずしも骨格筋の応答に依存しているわけではない, 3) 骨量低下からの回復は筋萎縮からの回復に比べて遷延し, 骨密度の回復には非荷重期間以上の長期を要すると結論された.非荷重や再荷重と関係した骨量と筋量の維持・増進を図る効果的な運動処法の確立には更なる研究が必要と考えられた.

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© 日本体力医学会
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