2003 年 52 巻 2 号 p. 167-178
本研究の目的は, 5秒間の全力ペダリング運動中における座位姿勢の変化が下肢筋群の筋活動および最大パワーに及ぼす影響を明らかにすることであった.被験者には, 大学陸上競技部に所属する男性10名 (21.5±1.9yrs, 178.8±4.7cm, 71.0±5.6kg) を用い, シートの高さを変化させた3種類 (High, MiddleおよびLow) の試技条件下で, それぞれ5秒間のペダリング運動を体重×0.1kpの負荷で行わせた.
主な結果は以下の通りである.
1.3回転の最大パワーは, HighがLowと比較して有意に高値を示した.
2.骨盤傾斜角度は, HighおよびMiddleがLowと比較して有意に高値を示した.
3.膝関節最大伸展角度および屈曲角度は, High, MiddleおよびLowの川頁に有意に高値を示した.
4.脊柱起立筋および大腿二頭筋におけるmEMGは, HighがLowと比較して有意に高値を示した.
5.Highにおいては, 3回転の最大パワーと大殿筋におけるmEMGとの間に有意な正の相関関係が認められた.また, 3回転の最大パワーと大腿二頭筋および外側広筋におけるmEMGとの間に正の相関傾向が認められた.以上の結果から, 5秒間の全力ペダリング運動において, シート高の変化による座位姿勢変化は下肢筋群, 特に股関節伸展筋群の筋張力および最大パワーに影響を及ぼす可能性があることが示唆された.